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CFRPレーザー加工の波長依存性:ラマン分析評価

 ICCPTでは、高強度・軽量材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の高精度加工を達成するとともに、個別生産技術として航空機・自動車産業への適用を図ることを目的として、非熱的レーザー加工の研究開発を行っています。
 ここでは、レーザー照射によるCFRP切断面周辺の状態変化を調べるため、波長の異なるレーザーでの加工後に、CFRPの構成材であるエポキシ樹脂をラマン分光法により分析しました。併せて、加工深さの波長依存性についても評価しました。
 用いたCFRPは1.6mm厚のUD材であり、レーザー加工には波長258nm、515nm、1030nmのナノ秒パルスレーザー(パルス幅5~10ns、繰返し10kHz)を使用しました。
 レーザー加工した溝周辺の樹脂部についてラマン分光を行った結果を、図1に示します。図1(a)は加工溝から200µm離れた部分、他方、(b)は加工溝近傍の樹脂のラマンスペクトルです。加工溝から離れた部分では、エポキシ樹脂に起因するエーテル結合(C-O-C)と炭素-炭素二重結合(C=C)のピークが確認できますが、加工溝近傍の樹脂はこれらのピークが消失しています。この傾向は、どの波長のレーザーとも同様です。これは、レーザー加工された溝表面付近では熱的な影響により樹脂の化学変化が発生していますが、加工溝から離れた部分では熱の影響が少なくなるため樹脂の構造変化が生じなくなることを意味します。一方、レーザー波長の違いからは、波長258nmでは、これらのピークが消失する領域は加工溝から約50µmと僅かに離れた領域までであるのに対し、515nm、1030nmの2波長では加工溝から100µm以上離れるまで消失が続くことがわかりました。言い換えれば、515nm、1030nmに比べて波長258nmでは、加工反応に寄与する熱の発生が少ないために樹脂の構造変化領域が少ないことが推察されます。
 次に、図2に、各波長のレーザーで溝加工したときの加工を示します。同じ照射フルエンスで比較すると、波長258nmの加工深さは他2波長の約2倍となっており、レーザーエネルギーが効率的に切断に使用されていることもわかりました。
 以上から、レーザーの熱によって変質した部位(HAZ)の発生量を抑制するためには赤外光よりも波長の短い紫外光を用いることが有効であることが、ラマン分析からも明らかになりました。

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参画機関

RIKEN 理化学研究所

MITSUBISHI ELECTRIC 三菱電機株式会社

GIGAPHOTON ギガフォトン株式会社

TORAY 東レ株式会社

フォトンテックイノベーションズ