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主な成果

フェムト秒超短パルスレーザーを用いたサファイアモスアイ加工

 周波数が300GHz程度までの電磁波(ミリ波)は、来る6G通信において中心的に用いられる周波数帯として今後研究開発が盛んに進められると考えらます。また、電波天文学の分野において、宇宙背景放射の周波数がこの周波数帯に属しており、この周波数帯の電磁波を制御する光学素子(レンズ、ウィンドウ、波長板など)が求められています。ICCPTでは、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と共同で、フェムト秒超短パルスレーザーを用いたレーザー加工技術を用いて、このような電磁波を制御するための素子の開発を進めています。
 電磁波の反射の防止は、求められる重要な機能性の一つですが、広い周波数領域で反射を抑制する構造として,波長程度の大きさの微細な突起構造が周期的に配列したモスアイと呼ばれる構造が知られています。しかしながら、ミリ波用のモスアイは、特徴的な構造サイズが数数100μm のオーダーとなるため、従来の加工法では作製が困難でした。我々は、サファイア基板に対して、中心波長1030nm、パルス幅290fs、平均パワー15Wのフェムト秒レーザーを光源として、ガルバノミラーでビームスポットを操作することにより、ミリ波領域のモスアイ構造を作製することに成功しました(図1)。高さ約2mm,周期約540μm のモスアイ構造が広い範囲にわたって均一に作製できていることがわかります。両面にモスアイ構造を作製したサファイア板の電磁波透過率スペクトルとシミュレーション結果が図2です。広い周波数領域で透過率がほぼ1、すなわち無反射特性が実現しており、シミュレーションから予想される結果ともよく一致していることがわかりました。
 現在、フェムト秒レーザーの平均パワーをさらに増大させ、数10cmオーダーの大面積サファイアモスアイ構造の作製技術の開発を進めています。またKavili IPMUでは、宇宙マイクロ波背景放射の偏光状態観測のプロジェクトLite-BIRDを推進しており、人工衛星に、本技術で作製したモスアイ構造を搭載することを目指しています。

fig1

図1:作製したモスアイ構造のレーザー顕微鏡像


fig2

図2:作製したモスアイ構造の透過率スペクトル(青点:実験、赤線:シミュレーション)


出版済論文:
R. Takaku, S. Hanany, H. Imada, H. Ishino, N. Katayama, K. Komatsu, K. Konishi, M. Kuwata-Gonokami, T. Matsumura, K. Mitsuda, H. Sakurai, Y. Sakurai, Q. Wen, N. Y. Yamasaki, K. Young, J. Yumoto, "Broadband, millimeter-wave anti-reflective structures on sapphire ablated with femto-second laser", Journal of Applied Physics, 128, 225302 (2020).

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参画機関

RIKEN 理化学研究所

MITSUBISHI ELECTRIC 三菱電機株式会社

GIGAPHOTON ギガフォトン株式会社

TORAY 東レ株式会社

フォトンテックイノベーションズ