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主な成果

たった1つのレーザー加工穴から、数十万点の加工深さビッグデータを取得

 レーザー加工は、炭素繊維複合材料やガラスのような加工の難しい材料に適用できる新しい製造加工技術として、近年大変注目されています。レーザー加工を設計・制御可能な技術として産業応用を進めていくためには、レーザー加工の際に生じている複雑な物理的・化学的現象の把握と、その原理の解明が不可欠です。最近の研究により、近年目覚ましい進歩を遂げている機械学習や大規模第一原理計算との組み合わせが、その実現に向けた強力な手法となることも明らかになってきました。このためには、強度、波長、パルス幅といった、レーザー光のさまざまな条件に対して、加工穴の深さや形状などに関する大量のデータを収集することが必要となります。しかしながら、レーザー加工は不可逆な現象であるために、実験には大量のレーザー加工穴の作製とそれらの測定が必要となります。そのため、実験可能な回数が限られてしまい、系統的かつ大量の学習データ(ビッグデータ)を取得することが困難という問題がありました。
 本研究では、イメージング技術を活用し、たった一つのレーザー加工穴から数十万点のデータを一度に求めることができる新たな手法(フルーエンスマップ法)を開発しました(図1)。レーザーパルスの強度分布が空間的に非一様であることに着目して、自作ビームプロファイラで測定したレーザー光の強度分布と、レーザー顕微鏡で測定した加工穴の深さ分布とを厳密に重ね合わせることにより、場所ごとのレーザー光強度と加工深さの関係を可視化することに成功しました(図2)。これによって、これまでの手法では1つの加工穴からは加工穴深さや穴半径などの限られた数点の情報しか得ることができなかったのに対し、本手法ではたった一つの加工穴から数十万点のデータを一度に取得することが可能となりました(図3)。本手法によって、機械学習に必要となるデータ取得の効率の劇的な向上や、第一原理計算結果と比較するための信頼性の高いデータの系統的な取得が可能となり、レーザー加工の原理解明と制御可能性の向上に向けて大きな役割を果たすことが期待されます。

fig1

図1: 今回発明したフルーエンスマップ法の概念図

fig2

図2:(a) フルーエンスマップ法の概要。自作ビームプロファイラによる測定した局所フルーエンス分布の測定結果(1)とレーザー顕微鏡で測定した加工穴深さの測定結果(2)を、数値処理により重ね合わせ(3)、フルーエンスマップと呼ばれるヒストグラムとして出力する(4)。 (b)加工に用いられたレーザーパルスの集光点におけるビームプロファイルの測定結果。 (c)波長 1030 nm、パルス幅190 fsのシングルパルスでレーザー加工したサファイア加工穴の高さプロファイルの測定結果。

fig3

図3:(a) レーザー光の局所フルーエンスと加工穴高さプロファイルの重ね合わせ情報。(b)局所フルーエンスと局所高さの関係を表すヒストグラム(フルーエンスマップ) 。

出版済論文:
Haruyuki Sakurai, Kuniaki Konishi, Hiroharu Tamaru, Junji Yumoto, Makoto Kuwata-Gonokami " Direct correlation of local fluence to single-pulse ultrashort laser ablated morphology ", Communications Materials, 2: 38 (2021).





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参画機関

RIKEN 理化学研究所

MITSUBISHI ELECTRIC 三菱電機株式会社

GIGAPHOTON ギガフォトン株式会社

TORAY 東レ株式会社

フォトンテックイノベーションズ